修論

最終回

参考文献 Alesina, A. and Eliana La Ferrara, 2002, “Who Trusts Others?”, Journal of Public Economics, 85: 207-234. 網野善彦,1987,『増補版 無縁・公界・楽――日本中世の自由と平和』平凡社. 青木昌彦,1995,『経済システムの進化と多元性――比較制…

第十九回

あとがき 本研究の作成過程は、奇しくもセキュリティに対する社会的関心を高める事件が起こった。少し例を挙げると、JR西日本福知山線脱線事故、アスベスト被害の増大、耐震強度偽装問題、少女の殺害事件、海外でもスマトラ沖地震、鳥インフルエンザなど。こ…

第十八回

補論 男女別、年齢別のソーシャル・キャピタル・インデックス 第5章で作成したソーシャル・キャピタル・インデックスは信頼、互酬性の規範、参加のネットワークのそれぞれについて男女別、年齢別で見ることができる。 だがここで注意しなければいけない点が…

第十七回

終章 まとめとインプリケーション ここまでの議論をまとめておこう。流動性が高く、リスクを個人で引き受けなければならない現代社会ではセキュリティが社会的な問題関心となり、不安のポリティクスが横行しやすいことも述べてきた。そうした状況では不安を…

第十六回

2 犯罪発生、ソーシャル・キャピタル、警察官数の多変量分析 第1節ではソーシャル・キャピタル・インデックスと犯罪認知件数との2変数による相関分析を行なった。それでは続いて、ソーシャル・キャピタル・インデックスと犯罪認知件数に第三の変数を加えて…

第十五回

第6章 犯罪発生に対するソーシャル・キャピタル1 犯罪発生とソーシャル・キャピタルの2変数分析 では第4章で検討したパットナムの研究枠組み・方法論に基づき、同章で検討した仮説1と仮説2について、第5章で作成したソーシャル・キャピタル・インデックスを…

第十四回

2 使用データ 使用するデータとしては、NHK放送文化研究所が1996年に実施した『全国県民意識調査』を使用する*1。 この『全国県民意識調査』について述べておくと、この調査は全国47都道府県で同一質問による世論調査を、同じ時期に実施し、日本人の意識構…

第十三回

第5章 ソーシャル・キャピタル・インデックス1 ソーシャル・キャピタル・インデックスの作成方法 それでは実証分析で用いるソーシャル・キャピタル・インデックスを作成しなければならないのだが、まずはその作成方法について述べよう。 ソーシャル・キャピ…

第十二回

3 仮説の提示 ここまでの議論(1節、2節)ではパットナムの研究に対して検討を加えてきたが、それではどのような方向で実証分析をしていけばよいのだろうか。本研究では犯罪とソーシャル・キャピタルとの具体的な関係を探るのだが、先ほどのパットナムの研…

第十一回

2 パットナムの研究から導ける実証分析の方法における課題 それでは次にパットナムの研究の課題に関する考察に移る。そもそもパットナムのソーシャル・キャピタル概念そのものに対する批判があるが、それはパットナムに対する批判として不十分であろう。パ…

第十回

第4章 パットナムにおける実証分析の再検討1 パットナムが行なった実証分析の方法に対する評価 ここで具体的にデータを使った実証分析に入る前に、まずパットナムの研究の枠組み、とりわけその方法論を検討する。そのためにパットナムが行ったソーシャル・…

第九回

3 ソーシャル・キャピタルによるセキュリティに対する疑問と応答 ここまで述べてきたのは、信頼、互酬性の規範、ネットワークという社会組織の総体であるソーシャル・キャピタルによってなされるアプローチとし、物理的な情報技術に基づく監視や法・警察力…

第八回

第3章 セキュリティに対するソーシャル・キャピタル 1 監視技術のリスクと法の厳罰化の限界 ここまで第1章でセキュリティが求められる社会的背景、第2章でソーシャル・キャピタルをめぐる議論を述べてきたが、両者の関係をここでまとめて整理しておく。なぜ…

第七回

3 ソーシャル・キャピタルの2つのネットワーク ここまでソーシャル・キャピタルは信頼・互酬性の規範・ネットワークなどから構成されることを確認したが、とりわけネットワークに注目すると大きく2種類にわけることができる。それは強い紐帯(strong tie)と…

第六回

第2章 ソーシャル・キャピタルの再検討1 ソーシャル・キャピタルはどのように定義されてきたか まずソーシャル・キャピタルについて定義づけを簡単に行っておく*1。 Social Capitalという言葉を始めて使ったのはアメリカの教育者ハニファンであるとされてい…

第五回

3 リスク社会化における第三セクターの役割 以上で述べてきたことを引き継ぐかたちで、「リスクの個人化」ということからソーシャル・キャピタルに基づいた非営利セクターを中心に第三セクター*1の必要性を考えてみる。 まず、リスクは個人の「決定」という…

第四回

第1章 なぜセキュリティが問題となるのか1 社会的関心としてのセキュリティ ジグムント・バウマンが現代社会を評した際に、「個人的な安全に対する人々の関心は、他の全ての関連のある恐怖よりも突出しており、他方、不安の他の原因は全て深い影の部分に隠…

第三回

3 研究の方法 まず犯罪認知件数とソーシャル・キャピタルとの関係について実証分析を行う前に、本研究のキーワードにもなるセキュリティとソーシャル・キャピタルについて比較的抽象的なレベルで理論的な整理を行う(第1章、第2章)。それはセキュリティ…

第二回

序章 本研究の視座1 問題意識と「問い」の設定 近年マスメディアを中心に、少年犯罪の「凶悪化」や刑法犯認知件数の「急増」が叫ばれている。実際に内閣府の「社会意識に関する世論調査 *1」では今の日本で悪化している分野として「治安」を上げる人が47.9…

第一回

修士論文 セキュリティの担保におけるソーシャル・キャピタルの役割 芦田拓真 一橋大学大学院社会学研究科修士課程 SM0410032006年1月提出 THE ROLE OF SOCIAL CAPITAL FOR KEEPING SECURITYASHIDA, TakumaMaster Thesis Graduate School of Social Sciences…

公開

以前のブログで少し書いたように(http://d.hatena.ne.jp/s01010ta/20061104/p2)、修士論文を公開します。理由としては、自分のPCの中に埋もれさせてても仕方が無いということが大きいです。もちろん、提出して受理されてから半年以上経っているので、修…