第十八回

補論 男女別、年齢別のソーシャル・キャピタル・インデックス

 第5章で作成したソーシャル・キャピタル・インデックスは信頼、互酬性の規範、参加のネットワークのそれぞれについて男女別、年齢別で見ることができる。
 だがここで注意しなければいけない点があるので述べておく。男女別で見た場合の「女性」や、年齢別で見た場合の「16歳〜25歳」、「66歳以上」では「仕事をもっていない」人数が多く、「仕事以外のことでもつきあうことは多いですか」「職場や仕事でつきあっている人には、信頼できる人が多いですか」という質問に対して「はい」と答える人の割合が減ってしまう(その代わりに「仕事を持っていない」と答える人の割合が増加する)という問題点がある*1
 その減り方としてはおおよそ20%程度である。つまり男性よりも女性の方が、また「16歳〜25歳」、「66歳以上」という年代では他の年代よりも、20%程度低くなるのである。したがって上記の項目を含む「信頼」や「ネットワーク」では他の質問項目が2つ3つあることから考えると、最終的な平均では「ネットワーク」で5%、「信頼」で7%程度「仕事を持たない」がゆえにポイントが減少している。このことを踏まえたうえでグラフを読む必要がある。

(図5)

図 5 男女別ソーシャル・キャピタル・インデックス

 そうすると総じて男性よりも女性のほうがソーシャル・キャピタルに恵まれていることがわかる。「信頼」では男性が54ポイント、女性が49+7ポイントとなっており、「ネットワーク」では男性が53ポイント、女性が49+5ポイントとなっている。さらに、とりわけ「互酬性の規範」においては男性が52ポイント、女性が56ポイントとその差は大きく開く。これら3つの構成要素のいずれをみても、女性の方が男性よりも多くなっている。その原因について明確にすることができないが、興味深い結果である。


(図6)

図 6 年齢別ソーシャル・キャピタル・インデックス

 次に年齢別でみると、「信頼」では36歳〜45歳、46歳〜55歳、56歳〜65歳が54ポイント程度、66歳〜が48+7ポイントと高くなっている。「ネットワーク」では16歳〜25歳が50+5ポイント、56歳〜65歳が約55ポイント、66歳〜が51+5ポイントである。「互酬性の規範」では56歳〜65歳が60ポイント、66歳〜が59ポイント、46歳〜55歳が55ポイントとなっている。
総じて言うと、56歳〜65歳、66歳〜の比較的高齢層でポイントが高くなる傾向があるといえる。

 以上、男女別、年齢別のソーシャル・キャピタル・インデックスについてみてきた。ただ注意しなければならないのは、これらのポイントを絶対視し、男女や年齢というカテゴリーで本質化してはならないということである。また全体的な傾向を個々人に当てはめることも誤りである。あくまでも「総じて言うならば」という条件の下で「参考」情報と考えておく必要がある。
 そして参考情報として考えると、ここで得られた男性よりも女性の方が、ソーシャル・キャピタル・インデックスが高く、また56歳〜65歳、66歳〜の比較的高齢層でポイントが高くなる傾向は、パットナムがソーシャル・キャピタルの減少原因と考えた女性の社会進出や世代効果(Putnam1995,2000)と合致する面がある。尤もパットナムはソーシャル・キャピタルの減少について社会的流動性の増加やテレビをはじめとするテクノロジーの進歩も挙げており、それを考えても、本章で得られたことを早急にソーシャル・キャピタルの増減と結びつけることは慎まねばならない。

*1:後ほど犯罪発生との分析の際には、都道府県ごとのインデックスを用いるため、男女別や年齢別で発生する「仕事を持っていない」という答えによる問題は生じてこない。つまり男女別や年齢別での「差」は平均化されるからである。