自民党新憲法草案

10月28日に自民党が新憲法草案を発表した。(新憲法起草委員会会長森喜朗
http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051028_a.pdf

自分は原理的な護憲ではないが、この草案をざっと見た限りでは、現行憲法の方がずっと良いように思われる。

「国民から国への縛り」であるものが憲法(したがって憲法を守るのは国)だが、全体として国への縛りは弱くなり、国民の自由は制限するような内容となっている。

典型的には、前文「日本国民は帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、」とある。この条文に基づいて何かしらの法律となり、国民を縛る可能性がある。

次に草案9条では自衛軍を明記している。このことは現状の明文化ということにすぎないが、そのコントローラビリティに限ると、「法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」とある。「その他」というのが短いが軍の統治の曖昧さを残す。そしてあわせて国際協調がその後で謳われており、曖昧な統制のもと自衛軍が海外派遣される可能性がある。

そして草案12条13条では「公益および公共の秩序に反しない」限りにおいてとある。いわば「公共の福祉」が「公益および公共の秩序」に変わった。12条では現行の「「公共の福祉」のために権利を利用する」ということから、草案では「「公益および公共の秩序」に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」に変わった。

自由よりも「公益および公共の秩序」の方が上位概念であると宣言したといえる。また気になるのは「権利を行使する責務」って何だろう。権利と責務は全く別の概念であって、今回の草案ではその区別がはなはだ曖昧なものとなっている。

さらに草案14条では「障害の有無」で差別されないとあるが、ここも慎重であるべき。

最後に改正手続きを定めた草案96条では「衆議院または参議院の議員の発議に基づき、各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決」と、現行憲法の「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議」から大幅に改正手続きが緩くなった。

今回の自民党草案は「愛国心」「伝統」をはっきり謳わないなど現実的になったとはいえ、50年やってきてこんなものなのか、だったら原行憲法の方がずっとマシという思いである。