簡単に、内閣府社会意識世論調査についての感想

内閣府の社会意識に関する世論調査(9日発表)で「治安の悪化」が懸念事項のトップになった。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050410k0000m040030000c.html
経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版

過去の社会意識に関する世論調査http://www8.cao.go.jp/survey/index-sha.html

そして今回のニュースでは報じられていないが、別のhttp://www8.cao.go.jp/survey/h16/h16-chian/index.html(H16年7月)をよく見てみると、治安やその悪化に興味を持ったのは、「テレビや新聞といったマスコミで報じられているから」というものだ。また悪化の理由として「少年犯罪の凶悪化」「外国人犯罪グループ」などが挙げられている。

しかし刑法犯認知件数でいえば、60年代の方が今よりもレベルでみた数値は高かった。また言われているほど急激に少年犯罪が増えたわけでもない。微増くらいである。そしてしばしば言及される外国人犯罪にしても、在日外国人そのものの数が増えているわけだから、単純なレベルで見るだけでなく比率とその推移で見る必要がある。

意識調査を考える際にやはり、マスコミの影響は無視できない。記者クラブや警察発表の垂れ流しといったマスコミの構造問題があり、著名人・芸能人のスキャンダルがないような、とりわけ何もない日には「察まわり」情報が報道される。テレビの報道が不安をあおり、不安になるので治安ニュースに関心がでてきて・・・といったマッチポンプがあるのだろう。さらに「凶悪犯罪は断固許すべからず」といった感情的な吹き上がりが番組内でコメンテーターからなされ、そうした感情的な吹き上がりを欲して/聞いて満足する視聴者がいるのだろう。数値的な分析(コミュニケーション)よりも感情的な吹き上がり(表出)の方が、あらかじめ「尺」の決まったテレビには向いている。

つまり、「〜と思いますか」で質問される意識調査に反映してるのは、実体的・物理的な「安全」よりも、心理面で「主観的な安心」が脅かされているということだろう。しかし、そこで不安の利用による監視カメラの導入、検察力・警察力の強化はそれ自体が不安要素になりえる。検察力・警察力からすれば、テレビが警察発表の「治安悪化」情報を流せば流すほど、自分たちの仕事は増える。まさしくマッチポンプ

単純に完全な安心が到達不可能である以上、物理的な安全だけは上昇していく可能性は否定できない。

あと気になったのは世論調査は面接方式で行ったとあるが、質問の聞き方で答えは変わってくる。うがった見方をすれば、内閣府という行政組織による調査である以上、上記のマッチポンプの一環とも見れる。すこし「治安悪化」を叫べば、警察力の強化という吹き上がりが期待できるからだ。とはいえ、行政組織も一枚岩ではなく、省庁間で利害が異なるのも当然のこと。