日本の癌―教育、メディア、政治、金融

経済不況といわれて久しいですが、その原因はもっと違うところにあるのではないかと思っています。その原因としてまずは金融。次に政治。さらにマスメディア、最も根本要因として教育です。それぞれに関して述べます。

現在、金融が悪い原因としてバブル崩壊に伴う多量の不良債権と企業側の債務問題、つまりバランスシート問題があります。そこにさらにデフレにより事実上の債務負担増が追い討ちをかけているわけです。企業は債務があるためあらたな設備投資が出来ない。したがって企業収益があがらない。企業収益が上がらないと何とか人件費等のコストをカットして収益をあげようとします。人件費のカットとは従業員(生産者)としては一見プラスですが、消費者として考えた場合には所得減となり家計が苦しくなります。家計が苦しくなるとどうなるかといえば、消費が落ち込むことになり、それは消費者として合理的な行動です。ですが企業としては物が売れないですからマイナスです。企業収益がさらに減ります。

こうしてどんどん悪い方向に向かっていく悪循環が出来てしまっている。もちろん貸し渋りも銀行にとっては合理的な行動ですが、企業にとってはたまったものではありません。経済は様々な要因が結びついて見方によってずいぶん変わりますが、個々人や一企業としては合理的に行動しています。しかしそれらの行動が全て合わさった時によい結果を生むとは限らない。これを「合成の誤謬」といいます。

この経済状況を打破するために「日銀は・・すべし」といわれますが、個人的には日銀はもうそれなりのことをやっているのではないかと思います。日銀の金融政策はすでに未踏の領域に踏み込んでいます。私は金融政策に関して保守的ですからインフレターゲットには反対です。今の福井総裁支持です。今日銀がやるべき政策としては信用秩序維持を堅持すべきだとは思いますが、日銀は魔法の杖ではないのでこれ以上期待するのは酷でしょう。私は今の経済状況を回復させるためには、「企業収益の改善」以外にはありえないと思います。そしてその民間企業の収益を回復させるために政府の出番となります。

民間企業の収益を回復させるために政府の出番とは具体的に言うならば、法人税減税・設備投資減税です。法人税減税によりエクセレント・カンパニーにより活躍をしてもらう。しかしながら、法人(企業)の3割程度しか今は税金を払っていない状況ですから、赤字企業にとっては法人税減税はそう効果を享受しにくい。そこで設備投資減税です。

しかしながらここでも一筋縄では行かない。現在政府の長期債務残高(借金)は約680兆円程度、GDP比で約140%という膨大な借金です。そこで減税を行なうとさらに財政が苦しくなる。こうした相反することを決定するのが政治です。みんなが喜ぶ政治決定・政策はありえません。当然ながら経済に関しても政治決定が行なわれるのです。そこを間違えると経済は悪くなる。政治と経済は分離した物ではなく、互いに依存しあっているのです。私は今の経済問題の原因は経済内部にあるのではなく政治にあるだろうと思っています。さきほどの財政でいうと、財政の基本は歳出に応じて歳入を決めることです。一般の家計が歳入に応じて歳出を決めるのと全く逆なのです。したがって、減税反対と分かりやすいスローガンを掲げるのではなく、まず余分な歳出を下ずるのがセオリーです。

といっても、余分な歳出・公共事業はなかなか削れない。抵抗勢力と言われる方たちがいますからね。ここで注意すべきはいわゆる「抵抗勢力」はどうして選ばれるのかというと選挙を通じて選ばれるわけですね。つまり抵抗勢力を日本の誰かが選挙で選んでいるということです。「政治が悪い」というのは簡単ですが、実は我々に責任があるのです。

そこで「選挙」というときに大きな役割を果たすのがマスコミ(メディア)です。政治の選択である選挙に関わらず、我々は一般的に「決定」「選択」するときには情報を必要としています。情報を供給するのはマスコミです。正しい選択が行なわれるためには正しい情報が必要です。逆に正しくない情報が供給されると正しくない選択が行なわれる。しばしばマスコミは視覚的に訴え、わかりやすく伝えようとします。しかし分かりやすいことが正しいこととイコールではない。そういう意味でマスコミがわかりやすさ第一で、正しくない情報を供給するために正しくない選択が起こりうるのだと言えなくも無いですね。例えば現在のテレビ偏重のマスコミにおいて、一見わかりやすいが正しくない物の例として抽象的な意味での「政治」と「市場」が挙げられます。よくテレビでは「政治」と称して国会中継が放送され、「市場」と称して東証などの株式市場が放送されています。しかしそれは「政治」や「市場」の1場面ではあるかもしれないが、抽象的な意味での「政治」「市場」を映し出すことはできていないですね。そういう意味で分かりやすいが正しくないです。

では最終的に一概にマスコミが悪いのかといえばそうでもない。マスコミは極端にいえば、「視聴率の取れない放送はしない」人たちです。視聴率がとれないとスポンサーが降りてしまいますから。もちろんスポンサーがいなくて視聴率を考えなくていいNHKは別です。視聴率をそんなに考えなくていいからNHKはすこしマニアックな、興味のある人にはおもしろい放送ができる。さて話をもどして、視聴率を取るとはどういうことかを考えるとその番組の内容がどうであれ、その情報に対しての需要があるということです。したがってマスコミが悪い、テレビの情報が浅いと批判がでる一方で、誰かがそういった情報を求めている。つまり政治が悪いのと同じく、ここでも我々にも責任があるのです。

じゃ我々にも責任があるということは何が原因なのかというと私は「教育」なのだろうと思います。何が価値のあること・情報で、何がそうでないのかを区別するためには教育の果たす役割が大きいのだと思います。教育には他にも問題があると考えているのですが、それだけでまとめて書くことになりますから改めて書きます。

今回の話はは経済不況→政治に原因→マスコミが原因→教育が原因という話でした。