The structure of Sociological Theoryのメモ

2005/7/15に書いたものです。

The Structure of Sociological Theory

The Structure of Sociological Theory

Ch30. Network Theory

過去30年、人類学、社会心理学社会学、コミュニケーション研究、心理学、地理学、政治学という学問では、「社会ネットワーク」における「構造」を概念化しようとした。

それまで直喩的、隠喩的に考えられていたネットワークの考え方に、様々な代数学グラフ理論、確率論が使われ、数学における基本概念が、様々な学問分野のネットワークに対する考え方に共通する、概念の核を与えた。
しかし、数学やコンピュータアルゴリズムを過剰に使うことは、多くの社会科学者のスキルを越えるものだった。さらに、そうした量的な分析に夢中になっているのは、実際の世界がどのように動いているか説明するのにあまり興味のない人たちである。

そうした状態にもかかわらず、ネットワーク理論が重要なのは、社会構造の重要な特性をとらえるからだ。
ジンメルが強調したように、社会構造を考えるときの核は、構造が関係や実体間の結びつきから成立しているということだ。


BASIC THEORETICAL CONCEPTS IN NETWORK ANALYSIS

Points and Nodes
ネットワークはある実体が別の実体と結びついている。そうした実体を点(points), ノード(nodes)と呼ぶ。それらは文字や数字で表される。p505の図30.1でのA,B,C,D,Eがノードである。
ネットワーク理論の目的は(一見わかりにくい)単位間の結びつきのパターンを(わかりやすく)見せることだ。
ネットワーク理論のもう一つの目的は単位間の結びつきのパターンの変動を説明することだ。


Links, Ties, and Connections
tieという概念はネットワークの特性を最もよく示すもので、図30.1のA-B,A-C,A-D,B-E,C-D,D-Eが紐帯(tie)である。
そして社会学として重要なのは、(グラフ理論では重要視されない)紐帯の性質である。それは情報の流れ、お金、商品、サービス、影響、感情、差異、威信、人を縛る権力や資源かもしれない。それらは大きく象徴、物質、感情の3つに分けられる。

ネットワークの形状は行列(matrix)としても表される。図30.1の行列は図30.2である。
ノードの数が多い場合、複雑な結びつきを把握するために図解より行列のほうが適している。


PATTERNS AND CONFIGURATION OF TIES

Number of Ties
ネットワーク分析の際に重要な情報は、ノードを結び付けている紐帯の総数である。
実際の紐帯のみならず、潜在的な紐帯も重要である。


Directedness
ネットワークを通じて資源がどちらに流れているかを知るのも重要で、線(line)の代わりに、矢印(arrow)が使われることもある。


Reciprocity of Ties
ネットワークでのもう一つの重要な特徴は、位置を結ぶ紐帯の相互性(reciprocity)である。


Transitivity of Ties
ネットワークの重要な次元は、一連の位置の推移性(transitivity)である。例えばA1とA2に肯定的な関係があり、A2とA3にも肯定的な関係があったとすれば、A1とA3にも肯定的な関係を推移律から導くことが出来る。


Density of Ties
ネットワークの重要な特性に、結びつきはどの程度かを表す密度(density)があり、すなわち最大限可能な紐帯の数に近づくほど、ネットワークの密度は上がっていく。(P508の図30.3を参照)
大きなネットワーク構造の中に、直接結びついているノードの集団があるとき、これをクリークと呼ぶ。(P508図30.4参照)


Strength of Ties
ネットワークのもう一つの重要な側面は、位置の間を流れる資源の程度や量である。つまり流れる資源の量が少ない時に弱い紐帯(weak tie)となり、多い時には強い紐帯(strong tie)である。


Bridges
下位の集団を結びついける紐帯をブリッジ(Bridge)と呼ぶ。Bridgeはネットワーク全体を維持するために重要である。


Brokerage
下位集団の外部にあるが、それらの集団を結びつける重要な位置を仲介(brokerage)とよぶ。P510図30.5でのA7の位置である。


Centrality
ネットワークでとりわけ重要な特性は、中心性(centrality)である。例えば、P508図30.3における点C、P510図30.5における点A5や点B4である。


Equivalence
ある位置が別の位置と同じ関係にあるとき、等価(equivalent)であるという。例えば、図30.6において点C2、C3、C4は(点C1に対して)等価である。また点A1、C1、D1は点Bに対して等価である。


CONCUSION
筆者(ターナー)によれば、ネットワーク分析は社会構造の理論に対し大きな潜在力を持っているが、その潜在力はおそらく開花しないだろう、と。
理由として、まず数量的な行列をネットワークに変換するだけでは、経験的な記述の方法にとどまるため、次にネットワークの変動について(実証的な記述はあるものの抽象的な)理論や原理を提示していないため、そして社会学の伝統的な概念を十分取り込めていないためである。


補足
社会ネットワーク分析はネットワークという社会構造から「なぜ」「どういうメカニズムで」その行為が起こったのかを明らかにする。従来型の実証分析では、ある属性に基づいた相関・因果を示すものであり、ある属性を有する者の方がそうでない者よりも、ある行為に至りやすいことは示しえるが、なぜ・どのようにしてその行為にいたったのかは明らかに出来ない。とりわけ同じ属性であったとしてもある行為に至る場合とそうでない場合があるときに、ネットワーク分析は有効である。(詳しいネットワーク分析の学問的背景は金光(2003)を参照)

また情報化がネットワークや組織のあり方に影響を与えていると思われる今日、交換理論と合理的選択理論を背景に、またシミュレーションなどコンピュータの演算力の向上をうけてネットワーク分析にはまだまだ可能性があると思われる。具体的には非営利組織も含めた組織の研究、信頼や社会的ジレンマの研究、ガバナンスの基礎としてのSocial Capital(社会関係資本)の研究が応用分野として考えられるか。


参考文献
安田雪1997『ネットワーク分析 何が行為を決定するか』新曜社
―――2001『実践ネットワーク分析 関係を解く理論と方法』新曜社
金光淳2003『社会ネットワーク分析の基礎 社会的関係資本論にむけて』勁草書房


ちなみに新しい版が出た模様

The Structure of Sociological Theory (Cram101 Textbook Outlines)

The Structure of Sociological Theory (Cram101 Textbook Outlines)