会社を辞める日

自分が会社で働いてみようと思ったのは、
1.金銭的理由
2.情報社会の研究を進める上で、技術の理解が必要だという研究上の理由
3.研究のほかに、純粋に実務にも興味があったこと


そして、今の会社を選んだのは
1.まずは、自分が看板の無い企業でどれだけやれるか試したかった
2.そして、フラットな組織で比較的自由だと思った

こうした理由で今の会社にいる。


ただ、会社に入ってからも研究をしていた学生時代から変わらないのは、
1.組織・社会(人が集まった時の行動)を理解したい
2.国籍・性別・年齢を問わず、優秀な人と一緒に仕事をしたい
という点だ。


そんな自分だが、今は会社を辞めようと思っている。

その理由として、以下の3つ。


1.会社が大きくなってネームバリューも出てきたこと

自分が入社した時と違って今はキレイなオフィスで、採用の応募も増えていると聞く。ただそんな流れの中で組織が大きくなるにつれて、見通しが悪くなっていっているように思うし、そのことは先述の「組織・社会(人が集まった時の行動)を理解したい」という思いと相反するようになってきた。

そして人が増えるにつれ、会社に来て座っているだけでお金がもらえるというような人・会社にぶらさがれば良いという人・残業代目当てでわざと長く会社にいる人も増えてきたようだ。実際に自分の眼で見たわけではないし、幸い自分の周りには直接いないのだけれど、そういう人の存在を伝え聞く。これは特定の誰それというより会社が大きくなるにつれて、そういう「サラリーマン」体質の人が増えていくということだろう。このことは先述の「国籍・性別を問わず、優秀な人と一緒に仕事をしたい」という思いと相反する。

自分の中では、会社があって自分があるという意識ではなく、自分という個人が会社に対してサービスを提供する対価として、会社から給料をもらうという意識でいる。自分の中では、「一度受けた仕事は大きかろうが小さかろうが最期までやる。そしてコスト意識を持ち、結果をだす」という意識で仕事をしている。だから会社にいるだけで、お金がもらえると思っている人の存在は、本当に自分のモチベーションを低下させ、「自分は会社で何やっているんだろう」と思う。
また、話しは変わるけど、先週、学部時代の友人にあったときは本当に楽しかった。みんながとても優秀で意識が高くて、一緒の時間を過ごせることが刺激になる。そんな時間を過ごすと、会社にいる時間の中で、つい「オレは何をやっているんだろう」と思う。


2.自分の興味・価値観の問題

仕事を続ける中で、やはり自分は技術そのものに興味が無いということがわかった。それは会社に入ってから読んだ本(都度、ブログにアップしている)を振り返ると確実にそう思う。アップしている本を振り返ると、自発的に読んだ本というのは、やはり社会・経営・情報社会という類いの本なのだ。技術の本は仕事で必要だから読み始めるものの、通読すらできない。やはり自分の興味は、「技術そのもの」にはなく、「技術が組織・社会に与える影響」にある。ちなみに技術に関しても、システムの中のロジックというよりも、お客さんにとって使いやすいかどうかというインタフェースの方により関心がある。

そして自分の価値観と会社の価値観の相違がはっきりしてきたこともある。仕事第一で、ガンガン働いて、ガンガン消費することが好きな体育会系の人たちが多いけども、自分はやはりそういう価値観が持てない。何より文化的なものに触れていたいし、ゆっくりした自分の時間が欲しい。仕事中心で、夜遅くまで職場にいて、朝になったら家を出るという家と職場の往復に虚しさを感じることも多い。

あとは会社もそこで働くひとを消費材のように考えているように思うことがある。少し高めの給料を設定して大量に採用して、どんどん現場に送り込めば利益になるという考え方に違和感もある。


3.ビジネスモデルによる感謝の違い

今のビジネスモデルは基本的にBtoBで、そこで動く金は基本的には会社のお金。会社相手の商売だから、消費者が身銭を切って動くお金とは額が違う。でもその違いは大きいのではないか。

よく自分の中で比較対象にするのが、昔やっていた塾の講師との違い。お金に関していうと、月謝で一人の子供あたり月々何万円も払えるご家庭というのはそう多くなく、実際に「金銭的な問題で受講できません」といわれたことがある。そんな中でも成績があがったときには「ありがとうございました」と心からいってもらえる。

一方で今の仕事では数千万や億単位のお金が動くし、結果をだせば感謝もされる。ただ同じ「ありがとう」でも価値は同じなのかと疑問に思うが、今は自分でも答えが出ない。

給料は今の方がはるかに多いが(正社員でコンサルタントとアルバイトの塾講師との違いだから当然すぎるけど)、やりがいでいうと、そんなはっきりとした違いは無く、むしろ昔の方があった気がする。



ざっと理由を書いたが、具体的にいつ辞めると決めているわけではない。なにより今たずさわるプロジェクトはうまくいっているし、優秀な人が集まり、やりがいもある。何よりお客さんへの責任を果たさなければいけない。だから今のプロジェクトが終わらない限り、辞めることはない。

それでも近い将来、今の会社を辞めて、新しいスタートを切る日が来る。ここで書いたことは、その日に向けてのものだ。