ホリエモンの背後

堀江容疑者が保釈され、そのニュース一色だった28日、「共謀罪」など組織犯罪処罰法が衆院法務委員会で採決されようとしていた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20060429/mng_____sei_____000.shtml

共謀罪 採決、連休明けに
 犯罪の実行行為がなくても、謀議に加わるだけで処罰可能な「共謀罪」新設を柱とした組織犯罪処罰法などの改正案について、与党は当初目指していた二十八日の衆院法務委員会での採決を断念し、大型連休明け以降に持ち越した。

 与党は同日午前の同委理事会で、同日中の採決を提案したが、民主党が拒否。このため与党は、国会運営全体への影響や世論の反発を考慮し、「同日中には採決しない」と譲歩した。

 理事会後に開かれた委員会は、二十五日から審議拒否していた民主、社民両党が復帰したため、三日ぶりに正常化。民主党提出の修正案の趣旨説明後、政府案や民主党の修正案などに対する質疑を行った。

 連休明けの日程をめぐっては、委員会後の理事会で、五月九日に参考人質疑を行うことを決定。与党は同日の採決は求めなかったが、早期の衆院通過を目指す構えを崩しておらず、与野党の攻防は激しさを増しそうだ。

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拙速審議は許されない 「共謀罪」法案
'06/4/28

 あまりにも唐突で強引。そんな疑念を強く抱かせる法案審議が、衆院法務委員会で始まっている。「共謀罪」の新設を柱とした組織犯罪処罰法改正案。犯罪行為がなくても事前の謀議だけで罪に問われるのが特徴だ。与党側はきょうの委員会での採決を提案。早期成立を目指している。

 政府案では、対象は四年以上の懲役・禁固に当たる罪。公選法職業安定法違反なども含め六百以上に上る。犯罪にまつわるブラックジョークさえ言うのがはばかられるような息詰まる社会を招きかねない。民主、社民両党は政府案には問題が多いとして審議を拒否。二十五日から変則的な論戦が始まった。

 極めて遺憾な事態というほかない。思想統制につながった戦前・戦中の「治安維持法」とも対比される法案だけに、慎重のうえにも慎重でなければならない。民主党が独自の修正案の提出を求めているだけに、なおさらだ。

 法務省などによると、この法律はテロ対策や麻薬の密輸などの国際犯罪の防止が目的。国際組織犯罪防止条約を批准するための法整備の一環でもある。中でも「共謀罪」の導入は、テロ摘発へ有力な法的よりどころになるとされる。改正案は過去に二度廃案になり、三度目の提案となった昨秋の特別国会でも継続審議になっていた。こうした経緯を振り返れば、政府・与党側が法整備を急ぐ理由も理解できないわけではない。

 だが、半面で適用範囲があいまいで無関係な市民生活まで侵害しかねない、などとして反対の声は根強い。加えて、法案の出された時期にも疑問が残る。提案説明は二十一日。竹島(韓国名・独島(トクト))周辺海域の日本の海洋調査計画をめぐり、日韓の主張が対立。国民やマスコミの耳目は一触即発の事態に注がれていた。偶然の一致としても、その後の日程に照らす限り、誠実な対応とは言い難いのではないか。

 政府案に対し、民主党案は共謀罪の対象を厳格化。(1)組織的犯罪集団が関与する場合に適用を限る(2)凶器を入手するなど「予備行為」を成立の要件にする―などと規定している。「五年超の犯罪」とすることで適用分野も半減できるという。

 与野党の法案の隔たりを見ても、「共謀罪」の論議が尽くされたとはとても言えまい。日本弁護士連合会は、法案そのものに反対している。拙速は厳に慎みたい。