金融業界の活発な動き

金融業界で事業売却や合併が起こっているが、理屈を文章で読むのではなく、実際にそういうことが起こっているのを観察するのは興味深い。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20081004k0000m020143000c.html

AIG:日本事業売却へ アリコ、スター、エジソン3社

 米政府の公的管理下に置かれた米保険最大手AIGは3日、リストラの一環として、日本のアリコジャパンAIGエジソン生命保険、AIGスター生命保険の生保3社の株式を売却すると発表した。外資系や日本の生損保大手が買収に名乗りをあげる可能性があり、国内保険業界の再編に発展しそうだ。

 AIGは傘下の米アリコの売却を発表し、支店であるアリコジャパンも米アリコと一体で売却される見通し。エジソンとスターは09年1月の合併を決めており、2社セットでの売却となる公算。3社の株式をどれだけ売却するかは未定だが、全株式を売却した場合、売却額はエジソンとスターは数千億円で、米アリコは1兆円超の規模とみられる。AIG米連邦準備制度理事会FRB)から最大で約9兆円の融資を受けることが決まっており、売却益を返済資金に充てる。

 AIGは日本で損保2社(AIU、アメリカンホーム)も運営しているが、この2社は維持する。また、AIGジェイアイ傷害火災保険の株式の50%、富士火災海上保険の株式の23%を保有しているが、これらの株式を売却するかどうかは決まっていない。

 AIGは同日、今後の資産売却方針に関する声明を発表し、「米国内外の損害保険事業を継続して保有し、米国外の生命保険事業も株式の持ち分を継続して保有する予定」と明記し、日本の生保3社については言及していなかった。

 その後に米国で開いた電話会見で、リディ米AIG会長が米アリコの売却方針を表明。会見終了後にAIGの日本法人が米AIGに確認したところ、アリコジャパンも売却対象に含まれているとともに、会見では言及しなかったエジソンとスターの売却方針も伝えられ、日本法人が3社の売却を盛り込んだ米AIGの発表文を追加して発表した。

 AIGは本業の保険以外にも、金融派生商品デリバティブ)などを幅広く手がけ、昨年夏以降の米金融市場の混乱で巨額の損失を計上。経営危機に陥り、先月16日に米政府の公的管理が決まった。【辻本貴洋】

 【ことば】アリコジャパン AIGの生命保険子会社で世界55以上の国・地域に展開する「アリコ」の日本支社。73年に外資系生命保険会社として日本に初めて進出した。低価格を売りにしたテレビコマーシャルの宣伝などで知名度を上げ、高齢者などに幅広く浸透した。08年3月期の保険料等収入は1兆4657億円(国内生保5位)。個人向け保険の契約件数は689万件。

 AIGスター生命

 00年に破綻した千代田生命保険をAIGが買収。08年3月期の保険料等収入は2663億円(国内生保23位)。個人向け保険の契約件数は165万件。

 AIGエジソン生命

 99年に破綻した東邦生命保険を米系のGEエジソン生命保険が引き継ぎ、さらに03年にAIGが買収した。08年3月期の保険料等収入は4073億円(国内生保22位)。個人向け保険の契約件数は228万件。


http://mainichi.jp/select/biz/news/20081005k0000m020110000c.html

アリコジャパン:売却先…日生、東京海上が関心

 日本の生命保険3社の売却を決めた米AIGは週明け以降、売却作業を本格化させる。最大の焦点はアリコジャパンの売却先で、日本生命保険東京海上ホールディングスなどが関心を示している。今後の展開次第では保険業界の大型再編に発展する可能性もある。

 アリコジャパンは日本のAIGの中核生保で、通信販売を活用して業績を伸ばしてきた。08年3月期の保険料等収入は1兆4657億円と国内大手4社に次ぐ規模。営業職員主体の国内生保や代理店を使った損保系生保とは対照的な販売手法だけに、日生や東京海上など複数の大手が「新たな顧客層を開拓できる」とみている。

 問題は1兆円を超すとの見方もある巨額の買収費用。国内勢は保険金不払い問題などで業績が伸び悩んでおり、「資金の確保が難しい」との声も漏れる。資金が豊富な外資系に対抗し、国内勢が連合して買収に名乗りを上げる可能性もある。

 また、アリコは保有するAIG株が急落し、AIGから先月末、907億円の資本注入を受けた。「財務内容が悪化しているのではないか」との懸念も呼んでおり、買収に関心を持つ国内勢も「資産内容を慎重に見極めた上でないと、交渉に乗り出せない」(大手生保幹部)という。

 売却発表を受け、4日はAIGのコールセンターに「契約は大丈夫か」などの問い合わせが相次いだ。AIGは「売却後も契約に影響はない」と説明しているが、売却先が早期に決まらないと契約者の不安が広がり、解約が増える恐れがある。AIGは通常は休みの5日もコールセンターで問い合わせに対応する【辻本貴洋】


http://mainichi.jp/select/biz/news/20081003dde001020025000c.html

三菱UFJFG:モルガン日本法人統合を検討 傘下証券と「M&A」首位に

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が、傘下の三菱UFJ証券と米証券大手モルガン・スタンレーの日本法人を経営統合する方向で検討していることが3日分かった。統合すれば、日本企業が絡んだM&A(企業の合併・買収)助言業務で最大手の野村ホールディングス(HD)を抜き国内トップクラスの証券会社となる。【斉藤望】

 三菱UFJFGは、米金融危機で株価が急落したモルガンに90億ドル(約9500億円)を出資し、21%出資の筆頭株主になる。併せて投資銀行や資産運用などの業務面での提携も検討しており、来年6月末までに具体化を目指す。証券会社の統合が提携の柱の一つで、弱点である証券業務の抜本的強化を図る。

 三菱UFJ証券を、法人部門(企業の株式引き受けやM&A関連業務など)と個人部門(一般投資家に株式を販売)に分割し、法人部門をモルガン日本法人であるモルガン・スタンレー証券と統合する計画を軸に検討している。個人部門は三菱UFJ証券として残す方針。

 海外企業が絡むM&Aや大企業の新株引き受けで実績があるモルガン・スタンレー証券との統合により投資銀行業務強化を目指す。

 総合情報会社トムソン・ロイターによると、日本企業が絡んだM&Aの助言業務の08年1〜9月の取引金額は、三菱UFJ証券が大半を占める三菱UFJFGは142億1100万ドル(約1兆5000億円)で3位、モルガン・スタンレー証券は91億2300万ドルで6位。両社を足すと、トップの野村HD(162億5200万ドル)を上回る。債券の引き受け業務でも国内最大級となる見通し。

 ただ、一般企業の売上高にあたる営業収益は、首位の野村HD、2位の大和証券グループ本社には及ばない。

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 ■ことば
 ◇モルガン・スタンレー

 米証券2位。19世紀創業の米財閥、モルガン商会が起源。昨年11月時点の総資産は、1兆454億ドル(約110兆円)。従業員は世界35カ国に約4万8000人。1970年に東京事務所を開設、84年に証券業免許を取得した。98年以来、日本で総額約2兆5000億円の不動産投資を実施している。

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 ■ことば
 ◇三菱UFJ証券

 05年10月、旧三菱東京フィナンシャル・グループと旧UFJホールディングスの合併に伴い、国際証券を母体とする三菱証券と、UFJつばさ証券が合併して発足。08年3月期の営業収益は5340億円。従業員数は約6500人。

毎日新聞 2008年10月3日 東京夕刊