ドラッカーの抜き書き

真夜中に考え事をしていたら、ドラッカーの1節を思い出し、読み直し、そして抜き書き。

 自らをマネジメントするためには、強みや仕事の仕方とともに、自らの価値観を知っておかなければならない。
 組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。組織において成果をあげるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじまなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果もあがらない。
 強みと仕事の仕方が合わないことはあまりない。両者は密接な関係にある。ところが、強みと価値観が合わないことは珍しくない。よくできること、特によくできること、恐ろしくよくできることが自らの価値観に合わない。世の中に貢献しているとの実感がわかず、人生のすべて、あるいはその一部を割くに値しないと思われることがある。

 私自身、成功してきたことと、自らの価値観の違いに悩んだ。一九三〇年代の半ば、ロンドンの投資銀行で働き、順風満帆だった。強みを十分に発揮していた。しかし、金を扱っても、世の中に貢献している実感がなかった。私にとって価値あるものは、金ではなく人だった。自分が金持ちになることにも価値を見出せなかった。大恐慌のさなかにあって、他に仕事の目当てがあるわけではなかった。だが、私は辞めた。正しい行動だった。

つまるところ、優先すべきは価値観である。

(中略)

最高のキャリアは、あららじめ計画して手にできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむよう用意をした者だけが手にできる。なぜならば、自らの得るべきところを知ることによって、普通の人、単に有能なだけの働き者が、卓越した仕事を行うようになるからである。


プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』P118,119

 最初の仕事はくじ引きである。最初から自らに適した仕事につく確率は高くない。得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年が必要である。
 われわれは気質や個性を軽んじがちである。だが気質や個性は、訓練によって容易に変えられるものではないだけに、重視し、明確に理解することが必要である。
 
 (中略)

「得るべきところはどこか」を慎重に考えた結果が、今働いているところではないということであるならば、次に問うべきは、「それはなぜか」である。「組織に価値観になじめないからか」「組織が堕落しているからか」。もしそうであるならば、人は確実にだめになる。自らが価値ありとするところで働くのでなければ、人は、自らを疑い、自らを軽く見るようになる。あるいはまた、上司が人を操ったり、自分のことしか考えないことがある。さらに困ったことに、尊敬する上司が、実は上司としてもっとも大切な仕事、つまり部下を育て、励まし、引き上げる役目を果たさないことがある。
 このように自らがところを得ていないとき、あるいは組織が腐っているとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい選択である。出世はたいした問題ではない。重要なのは、公正であることであり、公平であることである。さもなければ、やがて自らを二流の存在と見るようになってしまう。


プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』P229,230